ヤマハリゾート 葛城 北の丸 1984 (静岡県袋井市)

■古民家を再活用して建設した和風ホテル。

廃屋になっている古い民家の構造材を移築し建設した。
外観は建設地周辺の伝統的住宅形式である、切妻屋根に下屋を廻らせるる形態をを再現した。


Bird’s eye view 施設全景

Lookonng at Main house from Gate house.門より母屋を見る。

Looking at Main house 母屋を見る

Looking at main house from garden. 中庭より母屋を見る。

■内部は古民家の構造をそのまま見せた。

左:Entrance 玄関、右:Reception hall 玄関ホール

Guest room 客室(座敷部分は新しい材料で建てた。)

左:Bath 浴室、中:Guest house Loby 宿泊棟いろり、右:Stair 階段※
※階段の手摺は、雪で一度倒れた後、立上がった根曲がり松を古民家再生の象徴として、自分が山に入り選定した。

■ 計画概要

葛城ゴルフ倶楽部の付属ホテルとして企画した。
「伝統的な和風建築にしたい。」が施主であるヤマハ社長の川上源一氏の希望であった。
ヤマハは日本最大級の木材の貯蔵、加工所を所有していたので、本格的木造建築で建設することにした。

建築様式の決定にあたっては、当時ダム建設や、農業構造改善事業などが原因で多くの農村が廃棄されている現実を知り、この民家を再生活用することにした。
ヤマハの担当者福島氏と約1年間かけて中部、北陸、信越地方を民家行脚した。
結果、古民家は富山、石川県から購入した。
この地域は豪雪地域のため、構造材である柱、梁は太く、時代の劣化がほとんど無いことが理由であった。

■ 設計コンセプト

購入した民家はみな100年以上経過していたため、内部の構造材と建具を除いて、外部 は劣化し使用できる状態ではなかった。
そのため内部に古民家の構造材を使い、外部はこの地域の様式である切妻の大屋根に下屋 をめぐらす形態を基本とした。
配置計画は、敷地を新規造成するために、地盤の安定した切土地盤にすべての建築を配置 した。
結果として盛土部分の中庭を囲むような弓状な建築配置になり、リズム感のある 外部景観が出来た。

■ 工事 一夜城の建設

企画設計には通常の期間があったが、現場での施工は一夜城のごとく短期間にしろ、との厳命が川上社長からあった。
延面積1000坪以上本格的木造建築群である。
さらに古民 家再生の経験は設計者、施工者共にない。
住友建設と相談の結果岐阜県郡上八幡で下加工と仮組を施し、これを現場に運搬建設する工法を採用した。

現場では昼間建築工事を行い、夜設備工事を徹夜で作業した結果、工事はわずか4ヶ月 で完成した。

施設名称: 葛城 北の丸
用途: 和風ホテル
事業主: 日本楽器製造株式会社
場所: 静岡県袋井市
敷地面積: 14ha
延床面積: 3,376m2
竣工: 1978年
施工: 住友建設株式会社