ヤマハリゾート はいむるぶし 1979 (沖縄県八重山群小浜島)

【沖縄の伝統的風景を継承した建築】

沖縄が観光を重要な産業と考えるなら、風景は大切な資源である。 そこで、部落の分家、という概念で新施設の設計をした。 今ではこの赤瓦と珊瑚石の外観は、沖縄建築の標準様式になっている。

Bird's eye vieu 敷地全景
※中央棟を中心にして、周囲に宿泊棟や、テニスコート、果樹園等を配置した。
敷地の高低差を利用して、すべての建物から海が見える。
右上方がビーチ、手前の四角が果樹園。

Panoramic view of Center house センターハウス全景

Entrance 玄関
■7年かけて古瓦27万枚、珊瑚石50万個を集めた。

Loggia ロジア
■床のトラバーチンは、現地に中古の石加工機械を設置し、地元の人に加工を依託した。小浜島の石は国会議事堂にも使われていた。

Open air Lobby 開放ロビー

Dwelling Unit 宿泊棟

左:Guest room 客室、右:Open air Lobby 開放ロビー
■内装もすべて現地産の材料を用いた。

● 施設概要:

沖縄県八重山群小浜島に建設した沖縄県で最初の本格的マリンリゾート。
沖縄県の本土復帰にともない、地元の要請で建設した。
小浜島の約1/5である約60万坪の敷地に、ホテル、マリンスポーツ基地を1期工事で19 79年に建設し、その後、客室棟、テニスコート、ゴルフ場を増設しつづけ本格的マリン リゾートとして完成させた。

 

●設計コンセプト:

部落の分家 当時の小浜島は住民約250人の集落があるだけの素朴な島であった。
産業も砂糖キビをわずかに栽培している他は何も無く、観光の振興を地元は強く望んでい た。
わずか250人の集落に本格的リゾートを建設すると、従業員と客の人数は島民を大きく上 回り、建築施設の規模も巨大になる。これでは島の文化、景観、環境を破壊する。

そこで既存集落の分家という概念で、島の規模の施設が集まる新集落を建設し、客数も最初は最大時の部落人口400人を超えないように設定し、島の体力増強に合わせて増築する ことにした。

建物の外観も伝統素材である、赤瓦、珊瑚石積を基本とし、その他の材料も可能な限り地元産材を使用する方針にした。
そのために約7年かけて、古瓦27万枚、珊瑚石積50万個を集め、床のトラバーチンも 地元の山から切り出し、中古の石切り機械を現地に設置して製品にした。

内装にもサンゴ石を多くつかい、客室の天井も仮枠の上にスライスしたサンゴ石を敷き コンクリートを打込んだ。断熱材の変わりに屋根に光感知器と連動したシャワーを設置し 池の水を使用した。
この赤瓦と珊瑚石の壁は、今では沖縄建築の共通表現になっている。

施設名称: ヤマハリゾート はいむるぶし
用途: マリンリゾート
事業主: 日本楽器製造株式会社
場所: 沖縄県八重山群小浜島
敷地面積: 約70ha
延床面積: 3,300m2(1期工事)
竣工: 1979年
施工: 住友建設株式会社